この雄牛の頭が突出した意匠の金杯は、立体的に表わされた牛の頭部が器の穴に挿入され、リベットを使わずに、おそらくグラニュレーション法を使って接合してあると考えられていますが、その継ぎ目が殆ど分からない程洗練された技法です。小さな脚の底にはやはり幾何学的花文様が施されていますが、金属器としてはその器形は類例の少ないものです。
この接合技法については、金板どうしを手の込んだ打ち合わせをすることだけで接合してあるとする意見もあります。
これらのガラスや陶瓷の文様意匠は金属器、装飾品とも物質と地域を越えた共通点を持っています。これは紀元前三千年紀にすでに'国際的様式’がステアタイトの器とともに存在したように、広範な交易・文化的交流の産物と思われますが、なかでもギルロッシュ(縄文様)やロゼッタ(花文様)は正にその'国際的様式’以来おおよそ二千年以上その流行を保っていたと言えます。
関連美術品
牡牛装飾脚杯