この比較的小さな脚をもつ器の形態は、器壁から突出した牛頭の立体的装飾を除けば、その祖型を「乳頭杯」に求めることができます。
「乳頭杯」は紀元前二千年紀初頭から中期にかけての、マルリクに代表されるカスピ海南部地域、メソポタミアの中部から北部、そして地中海東岸地域などに広く見られる陶製やガラス製杯であり、これらを立てるために小さな円筒形の脚をつけました。
またこの先の丸い花弁文様を同様の形態の器の下部に巡らせた意匠は同じ頃のアッシリア中王朝アッシュール出土の練ガラス杯に酷似しており、やや時代の降った紀元前一千年紀初頭と思われるルリスタンのいわゆる「シトゥラ」(水取容器)にも見られます。これは乳頭杯の祖型を保っているものであると言えます。
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牡牛装飾脚杯