メソポタミアには潅奠(かんてん/ライベイション)という液体を注ぐ宗教的儀礼が古く
からありますが、井戸の冷水、聖水が神々に捧げられました。
南メソポタミアのバビロニアでは、死者に対する潅奠は水のみが使われたようです。更に、メソポタミアの神話には「生命の水」を捧げる話が見られます。
死者に対しての灌奠は地中に差し込まれた粘土製の管に注がれました。
マルリク周辺、北イランからは長い注口のついた青銅器が出土していますが、これを陶器に写した黒色ないし黒褐色の注口付土器が同地域から見つかっています。
ここに見られる、紀元前1000年頃と思われる器の長い注口は、長い管の上部を先端に向
けて削り、細長い開口部が作られています。還元焔で焼成したためか黒色を帯びていますが、注口に環状装飾を巡らし、表面を研磨するなど金属器に似せる工夫がなされています。
おそらくこの器に特有な長い半管状の注口は、この地中の死者に対し延べられた管に水を注ぐためのものであったと想像されます。
この種の器は獣足の台にのせられて使用されましたが、この注口の反対側には縦に伸びた凸帯が見られ、北イランから出土したほぼ同時代と考えられる注口付の形象土器との関連から類推して、何らかこれらの儀器に表された動物の尻尾を表現したものではないかと思われます。
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