このように青銅でつくられた古代エジプトの猫の奉献像は数多く現存する。体は銅の節約のために中空になっており、またより大きなものは猫のミイラの容器もしくは柩(ひつぎ)としても使われた。座った姿勢以外の例としては、うずくまったもの、母猫が小猫に授乳しているもの、直立して女神のように着飾っているものなどがある。猫は女神の精神を宿すために常に隙のない姿で表され、現代の愛猫家がやさしいまなざしを注ぐような、丸くなって眠っている様子を表現することは決してない。青銅のほかにも、ファイアンス、木、粘土、石で作られたものがある。隼、ヒヒ、牡牛やその他数種類のエジプトの聖なる動物の場合と違って、猫を表した記念碑的な石像は知られていない。古代の動物彫刻の中で耳に穴をあけてきちんとイヤリングをつけているのは、猫の像のみである。

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猫(バステト)像