頭をわずかに下げた非常に重量感のあるこの牡牛像は、胴体の筋肉組織の力強い造形と表面に描かれた文様が特異な結合をしているのが特徴的である。表面の文様は、肌のきめを表現するだけではなく、この動物の解剖学的構造をさらに詳細に線描するために付け加えられたものである。内湾した短い角、後方に折り曲げられた耳、丸くふくらんだ大きな目、鼻孔を示す丸みを帯びた刻み目、わずかに開いた口、何もかもこの像をユニークなものにしたてている。前脚と腹部と後脚は、それぞれの量感表現によって区分されている。のどぶくろの皮膚が前脚の間に垂れ下がり、性器が形作られ、先端が柔毛で覆われた尾が後脚の間に垂れ下がっている。前頭部、顎、胸の部分と、背中から腹部にかけての三角形部分には、うろこ状の文様が刻まれている。体毛を表現したものだろう。前頭部には盛り上がった逆三角形がある。また両端が梨形をした凸帯は、胸の筋肉と腱を表現したものと思われる。

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牡牛像形分銅