誇らしげに歩くこのような鳥の姿は、前2千年紀後半のメソポタミアの美術にはほとんど類例のないものである。メソポタミアでは、猛禽類は家畜と一緒に紋章のように対称的な配置で描かれるのが一般的であった。しかし、カスピ海の分水嶺の南西地域に位置するマルリク遺跡の32号墓からつぶれた形で発掘された金製鉢には、大股で歩く鳥が描かれている。この杯の猛禽類は、その姿勢とがっしりしたプロポーションがマルリクの鳥と共通している。しかし、マルリクの鳥の方が技術的にはより進歩しており、頭は丸彫りで仕上げられて、外側を向いている。この杯はもっと簡素でそれほど洗練されていないので、マルリクの鉢よりも時代がさかのぼると思われる。
古代オリエント地図 Map of Ancient Orient

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猛禽文様杯