土器の胎土、器形、磨研した表面からこの作品は、前2千年紀の後半から1千年紀の初期にかけて土器と金属器の間に相互影響が顕著であった、北または北西イランで制作されたものであることがわかる。長い嘴形注口は壊れやすいことから考えると、この容器は日用品というよりも儀式用として用いられていたであろう。把手が無いから、このような容器は使用者が両手で抱き抱え、注意深く液体を注いだにちがいない。長い注口から注がれる液体は見応えのある大きな弧を描いて流れる。手のこんだ儀式に適切な容器である。同種の容器や他の精巧な注口付き容器が墓の中から発見されている。液体(水、葡萄酒など)を注ぐ潅奠(かんてん)の儀式を含む葬送儀礼が行われたと思われる。器形の優雅さ、類品が少なさからみて、高位の人のために名匠が制作したと思われる。
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嘴形注口容器