平安時代後期 11世紀
彩箋墨書
縦:21.0cm 横:12.6cm

桂宮家に伝来したことからこの名で呼ばれる。もとは巻子本。宮内庁には同じ巻第四の残巻が保管されているが,料紙は白,黄,茶,赤といったさまざまな染紙が用いられ,下絵には樹木,草花,蝶などが描かれる。また,紙背の継ぎ目には伏見天皇が花押を据えており,かつて同天皇の愛蔵品であったことが知られる。

ちなみに,のち加賀の前田利家夫人松子(芳春院)の所蔵となり,その孫の富子が智仁親王のもとに嫁ぐにあたり桂宮家に移った。元暦校本,藍紙本,金沢本,天治本とともに五大万葉集の一つに数えられる。「栂尾切」の呼称の起こりは不詳。

歌題を少し高く書き,歌は真名と仮名の二つの書体を並記する。かつては伝承筆者として,紀貫之,源順,宗尊親王などの名があがっていたが,現在は「高野切(第二種)」「関戸本和漢朗詠集切」と筆跡を同じくすることから,源兼行(生没年不詳)をもってその筆者にあてる説が有力となっている。 (下坂)

関連美術品
桂本万葉集巻第四断簡(栂尾切)