鎌倉時代 13世紀
紙本墨書
縦:28.0cm 横:42.8cm

春日懐紙とは,鎌倉時代に奈良の春日社,東大寺,興福寺の神主,僧侶らが催した和歌会の懐紙の総称。大半は春日社での法楽和歌会で詠まれた歌の懐紙で,鎌倉時代における奈良歌壇の実態を伝えるものとして貴重な史料。

本懐紙は祐定の子祐方が書いたもので,同じ「早鴬趁赴竹」「春草漸萌」「山有余寒」の三題をもった懐紙としては,実眼なる僧の懐紙が残る。

なお,紙背に見えるのは,春日若宮の神主中臣祐定(1198〜1269)が書写した『万葉集』。料紙の中央に残る折り目の跡,両端に残る各六個の綴じ穴は,祐定が『万葉集』を袋綴の冊子に仕立てあげたときのもの。冊子を作るときに天地を裁ち落としており,文字の一部を欠く懐紙も少なくないが,本幅はすべての文字を残しており当初の姿をよく留めている。 (下坂)

関連美術品
春日懐紙(中臣祐方筆)