てんりう(天龍)寺ハもんと(門徒)の大なる
  御寺にて仏法を本とし
  たる御事にて候。それにつき
  候てハ御さバくり(上裁)により候て、
  てんりう寺もしさい(子細)なく候うゑ、
  国し(夢窓国師)の御あとにてわたらせをハ(御
  し(坐)まし候へば、その御なつかしさも
  候ほどに、雲ご(居)庵のばうず(坊主)の
  御方へ申をき候。
一仏殿の事、ざうゑい(造営)候て給
 ハり候べきよし、御やくそく(約束)にて
 候しかバ、惠日く(供)養どもかハらず(かゝわらずカ?)、
 こればかりをバいかにもじやうじゆ(成就)
 して給り候はゞ、悦入候べく候。
一五辻景愛寺のぢうぢしき(住持職)
 の事、恵ごん(巌)ちやうらう(長老)にゆづり候。
 かまへて〃〃しぜん(自然)の事候はゞ、
 御ふち(扶持)候てたまは(給)り候べく候。
一たう(当)寺のちう(重)書あづけまいらせ候。
 女性などはかやうの事もぶさた(無沙汰)
 なることも候ハんずる程ニ申
 をき候。長老のめい(命)もおは(終)り、とく(特)
 ぢう(住)などの心ざし(志)も候ハん時、又雲こ(居)
 あむのばうずしぜんの事候ハん時ハ、
 長老と御だんかう(談合)候て御うけとり候へば、
 あらためて、よく候やうに御はからひ候べく候。
一かやうに申をき候も寺のため
 を思ふゆえにて候。しぜんに(望)のぞミ
 申候人候とも、しじう(始終)寺のため
 あしく候ハんずるほどに、惠日が
 ふけう(不孝)の人は御せういん(承引)候ま
                  じく候。
   文和三年五月八日 惠日(花押)

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