江戸時代 18世紀
紙本著色
縦:30.5cm 横:43.1cm

尾形乾山(1663〜1743)は,尾形光琳の弟。前半世は陶工として名高かったが,晩年のはなはだ雅味に富んだ絵画作品も人気を呼んだ。ことに和歌などを散らし書き風に絵のなかにおさめた作品に優れたものが多い。
本図は画面の対角線の下半分に山肌と流水を配する構図をとる。この構図法は兄の光琳も得意としたところで,兄に絵を学んだとされる乾山の絵画修業の一端をうかがわせる。月は伝統に準じて銀泥で処理し,鈍く光らせている。
乾山得意の散らし書きは,『新古今和歌集』源信明の「ほのほのと有明の月の月かけに紅葉吹おろす山をろしの風」である。
一般的には光琳の絵にはどこか鋭ぎすまされた感覚が潜んでいるが,乾山の絵にはむしろわれわれの緊張を解きほぐすような柔らかな感覚がある。 (狩野)

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紅葉図 尾形乾山筆