江戸時代 18世紀
高:7.3cm 口径:10.2cm 高台径:5.3cm

銹絵で梅の樹の幹と枝を,染付で萼を下絵付けしてから,白泥で白梅の花弁を描き,半透明の釉を掛けて本焼きしている。上絵付けには,赤・緑・黄の三色の絵の具が用いられ,紅梅の花弁,梅の樹の新芽,白梅の蘂が表現されている。削り出された高台の畳付と高台内は露胎で,高台脇には「乾山」銘が銹絵で記されている。
製作時期の特定は難しいが,この茶碗には,「や梨むめ 京兆紫翠深省」の墨書箱書(蓋表)が伴っており,深省の「深」字が古字に作られていることが手掛かりとなる。書状や箱書方面からの研究では,享保年間よりさかのぼる時期の署名に見あたらないことを根拠に,「深」の古字は晩年に使われていた可能性が指摘されている。したがって,箱を共箱とみなすならば,この茶碗の製作年代も下げて考えなければならず,早くても二条丁子屋町時代,遅ければ享保16年(1731)のこととされる乾山の江戸下向以降の製作ということになろう。 (尾野)

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