江戸時代 18-19世紀
高:6.6cm 胴径:8.1cm 高台径:4.5cm
いわゆる数物の小型の汁次である。箱書に「乾山焼加らみ次」(蓋表)「乾山焼 そは切用 からミ入」(箱側面)とあるから,蕎麦つゆの容器であるらしい。蓋から身の一部にかけて白泥を化粧掛けした上に,銹絵と染付で絵替りの文様を下絵付けしている。個体によっては,掻き落としの手法で細部の表現が加えられており,最後に底部を除く外面全面に透明釉が掛けられている。
十客揃いになっているが,器形・胎土・焼成が明らかに異なるものが一客あり,後補の可能性が高い。残り九客は,おおむね共通したつくりであることから,元からのセットとみてよさそうである。ただし,蓋と身の文様がうまく連続しない一客については,蓋の径が大きすぎ,おさまりが悪いことからみても,本来別個の身に伴っていた蓋を組み合わせたのであろう。
後補とみられる一客を除く九客のうち,八客の胴部下半に銹絵で「乾山」の銘が記されているが,筆跡にはばらつきが認められ,複数の工人の手によるものではないかと思われる。おそらく乾山焼としては新しい時期のものであり,鳴滝時代まではさかのぼらないであろう。 (尾野)
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