私歌集「麗花集」の断簡で、香紙切の名は、料紙に丁字で染めた、いわゆる香紙を用いていることに由来する。筆者は三十六歌仙の一人に数えられる小大君と伝え、また、藤原公任との説もある。筆力に富んだその連綿体の多いその筆跡から推定して、制作時期は十二世紀前半を下ることはないであろう。天に舞う鳥と可憐な花が配された花鳥文の裂地を使った表装の美しさは、平安時代の流れるように優美な書と見事にマッチしている。

関連美術品
麗花集断簡(香紙切)(藤原公任筆)