鎌倉時代の天皇は学問とともに、和歌・詩文・書にも励んだため能書家が多く輩出した。その筆跡は力強く、すぐれたものが多いことから、特に鎌倉時代の天皇の筆跡は宸翰様と呼ばれる。伏見天皇は第九十二代天皇で、和歌と書に長じ、その書風は伏見院流と呼ばれた。御製も多く、「新後撰集」以下の勅撰和歌集に245首が選ばれている。小野道風・藤原佐理(すけまさ)・藤原行成(ゆきなり)の、いわゆる「三蹟」の上代様に学んだ流麗な筆跡は穏やかで潤いに充ち、美しい料紙が上代様をいっそう華やかなものにしている。
関連美術品
新古今和歌集断簡(伏見天皇筆)