乾山の茶碗には半筒形のものも多い。きれいに轆轤成形された器形は茶碗としての破綻はない。しかし逆に、乾山としての個性の感じられないものといえる。というのも乾山は、成形、絵付け、焼成などそれぞれの製作過程で専門の陶工による分業、つまり工房という形態をとっていたからである。しかしながらそこから生み出される作品はまぎれもない乾山陶であり、乾山独自の装飾性に溢れたものとなっていることは言うまでもない。この茶碗にはわらびなど春の野草が外側だけではなく内側にまでいきいきと描かれている。春の陽気に芽吹く草々の生命力が伝わってくるような、気分のいい茶碗である。
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乾山銹絵染付春草図茶碗