乾山は仁清に陶法を学んでいるが、仁清のとった色絵の技法は釉上色絵といわれるものであった。一度焼き締めた器胎の上に色絵をつけてもう一度焼くこの方法では、どうしても色絵が一段高い層になり浮き上がってしまう。絹本や紙本の絵画に世界に慣れ親しんできた乾山にとっては納得のいかない技法であったらしく、乾山は釉下色絵という方法をとっている。この方法によると絹や紙の上に描くのと同じ感覚で器胎の上にしっとりとした絵を描くことができたのである。この向付は本来は組物であったと思われるが、1客だけが伝わっている。型作りされた器胎の内側一面に大きく2輪の白い牡丹が描かれ、エメラルドグリーンに塗られた葉の中で鮮やかに花開いている。
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乾山色絵立葵図向付