雪にまつわる図柄は松だけではなく、杉もある。本作は二本の重なり合う杉が雪を被った図柄で、これもその姿がそのまま器形となっている。型造りで成形され、白化粧の下地を施して銹絵で杉の枝幹を描く。裏面側面にも白化粧下地が施され、銹絵で刷毛引きされる。全体に透明釉を掛けて本焼した後、杉葉の部分に緑の上絵付が施され、幹の根元、土坡の部分には一見してわかりにくいが、金彩が施されている。裏面には六ないし七角錐形の脚が三つつき、脚底部のみ露胎、脚を削った痕跡がよく残っている。中央に、短冊形の白化粧下地に銹絵で縁取された「乾山」銘が記される。透明釉には全体に細かい貫入が、白化粧の部分にはいくつもピンホールが生じ、柔らかい釉調の肌合いとなっている。また底部には灰青色を呈する灰釉系透明釉のトンボの目状の釉溜が美しく生じている。雪松図平鉢(作品136・137)も同様であるが、冠雪を表すため口縁には銹絵の口紅は施されていない。本来は組物であったと思われるが、今のところ他に作例は見られない。成形法や乾山銘の施し方など、典型的な二条丁子屋町時代の作風を示する向付である。

関連美術品
乾山色絵雪杉図向付