北方騎馬民族にとって馬具は必要不可欠のもので、高度に発達するとともに豪華な装飾もなされた。この鞍金具は、中国の東北地方を占拠して前燕国(352?370)を建てた鮮卑族慕容部の上層人物の墓から出土し、鞍の前後の前輪と後しず輪わにおいて、木芯の鞍を包み飾るものである。前輪、後輪ともに外側の磯と内側の海(翼形部)の2部から成り、いずれも透彫により亀甲形の中に鳳凰、龍、羽人、怪獣などを表し、鍍金を施している。この墓からはまた重装備騎兵の防具である鉄兜、鉄馬冑、鉄馬甲などの甲騎具装が中国で初めて出土し、これらが朝鮮半島、更に日本へと伝わっていったのである。(SH)

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鞍金具(2点)