白鳳時代 七世紀後半−八世紀初頭
ガラス坩堝 高八・七−一六・〇
ガラス小玉用鋳型、破片
ガラス材料 石英、長石、方鉛鉱、酸化鉛(方鉛鉱を焼成したもの)
ガラス玉、破片(紺、青、緑、黄緑、褐色)
宝玉材料 水晶 琥珀 瑪瑙
奈良文化財研究所・飛鳥藤原宮跡発掘調査部蔵
奈良・飛鳥寺の東南に位置する飛鳥池遺跡から、金、銀、銅、鉄、玉類、漆工品の製作工房と共に、原料ガラスの製造とガラス成形を行っていた工房の確かな証拠が発見された。炭を燃やした多くの炉跡と鞴の羽口、先の尖った土製の坩堝で中にガラスの付着したもの、たこ焼き器のような小玉用鋳型、そしてさまざまな色のガラス玉や破片などである。
原料ガラスの製造法は、炉の中に炭を燃やし坩堝を燃える炭の中に埋め、鞴で風を送って温度を上げる。坩堝の中には砕いた石英や長石など珪素を含む原料に、方鉛鉱を焼いた酸化鉛を加えて焼成した。鉛を加えるのは、低温でも原料の石が熔けるようにするためである。おそらくガラス化した原料を幾度か焼き直して更にガラスの純度を上げ、着色料を加えて、さまざまな色の原料ガラスを製造した。その後は金属棒に巻き取って空気を入れて両側から引っ張り、中空の管を作って短く切ってから、鋳型に入れて剥離剤となる刈萱草に鉄芯を通したものを中央に立て、再度焼成してガラスビーズを作ったと想像される。
巻き取ったガラスが垂れて棒状になったらしい破片が見られることから、巻き取ることが可能な状態に熔融できたと考えられる。飛鳥京観光協会が行っている再現実験では、約八〇〇度で原料が熔け出し、九〇〇度から一〇〇〇度くらいになると、作業がしやすいとのことである。また杏仁形に成形されたガラス片もあり、おそらく太刀などの象嵌に使用するために、その形の型に詰めて焼成されたと想像される。
水晶、琥珀、瑪瑙、黒漆を塗った玉が同じ場所から見つかるのは、透明、赤、黒などガラスで作りにくい色の素材を補って、製品を作ったのであろう。
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