布袋図 狩野正信筆 図録解説
 布袋とは中国明州奉化県出身に実在した禅僧契此(?- 916)のことで、その死後まもなく、「散聖」「弥勒の化身」という二つのイメージを抱合しつつ、その姿が描かれることになったと考えられる。大きな袋を担いで、腹を露わにして、笑みを浮かべる姿が特徴で、彼の持つ布袋がそのまま彼の名前となった。日本における布袋像は、禅僧のなかで描かれたが、後に福神信仰の流行によって、七福神の1人に加えられた。
 本図は髭や手や腕の繊細な毛の表現や打ち込みのある衣紋表現、また代赭による繊細な彩色など他の正信作品と共通する特徴を見出せる。また、本図とほぼ同じ姿の布袋を描いた正信筆「崖下布袋図」(個人蔵、重要文化財)がある。画面上部にある当時の五山僧・景徐周麟(1440-1518)の賛から、明応5年(1496)から同9年の間に賛をしたことが分かっている。本図も「崖下布袋図」とほぼ同時期の作と推定されている。

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