寛文美人図 図録解説
 寛文美人図は江戸時代寛文期(1661-1673)頃に流行した美人図で、大きな図柄を大胆に配置した、いわゆる寛文小袖を身に纏う。
 金色で縁取られた花弁は赤や青の鹿の子絞り、亀甲文、市松文、花柄など、華やかな模様の布地がパッチワークのように組み合わされている。黒地に金の刺繍で散らされた桜の花は、夜の闇に咲き誇っているような風情で、女性の艶やかさを一層際立たせている。黒い下地に金の桜をあしらった衣装はその他の寛文美人図にも見られ、色々な布地で構成された大柄の花も同様に、他の類例でも少なからず使われている。黒、緑、朱、黄色の4層に重なる襟元は、色の組み合わせが何とも言えずおしゃれである。
 細い体をS字にくねらせた艶美な姿は、宴席で舞う様を写し出しているようだ。髪型は御所髷のようで、右手には芍薬を持ち、左手は袖に隠して、両足は長い着物の裾を踏む。寛文美人図には、花枝や花籠を手にしたものがよく見られるが、当時の女性の教養として重要視されていた生け花との関係が指摘されている。
 寛文美人図は筆者が明らかでない作品が多く、本作品にも署名、捺印はない。

関連美術品
50 寛文美人図