銹絵牡丹図角皿 光琳画 図録解説
表面に百花の王に相応しい瑞々しい牡丹が銹絵で画面いっぱいに描かれた、兄・光琳との合作の角皿です。色紙のような正方形、立ち上がった縁には文様が記されていることから額皿とも呼ばれます。
牡丹の葉の一部に、琳派の特徴であるたらし込み風の技法による描写が見られます。通常、素焼きの場合だと筆が引っ掛かり、紙や絹の上のように滑らかに絵筆は走りません。しかも筆をつけた途端、釉は瞬時に吸い込まれていきます。乾山の採用した全面白化粧掛けの方法は、このやきものの難点を筆致のみならず、視覚的にも紙本や絹本に描かれる絵画に近づけるためにあみ出された工夫でした。光琳が描いた絵は、「光琳深省茶碗絵手本」(東京・出光美術館蔵)に見られるように勢い余ってはみ出してしまった、そんな筆勢も感じさせるほど葉が画面からはみ出し、生き生きと描かれています。
右上に記された乾山の詩賛は如何にも窮屈そうで、茎際の「光琳(寿字型花押)」銘さえも場所がないので仕方なく記されたように見受けられます。この合作は兄弟仲の良さとともに性格の違いまでも伝えてくれるようで、どこか微笑ましく思えてきます。
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乾山銹絵牡丹画角皿(尾形光琳画)