ごあいさつ
和ガラスの美を求めて ─ 瓶泥舎コレクション ─

   美しいガラスを求めて半世紀、東へ西へ日本のどこであろうとその彼女に会いに行く。夫・大藤範里にとって「びいどろ・ぎやまん」は、まさに恋人のような存在でした。2011年(平成23)4月9日、長年の夢であった和ガラス専門の美術館『瓶泥舎びいどろ・ぎやまん・ガラス美術館』を、地元松山の道後に誕生させました。夢と希望にあふれ、キラキラ輝く瞳は少年のようだったことを今でも思い出します。 展示室
   瓶泥舎コレクションの一番の特徴は、なんといっても「美しいガラス」であることです。それは初代館長 大藤範里の眼であり、美しいガラスを直感でとらえるセンスは、誰にも真似のできない世界です。例えば、空中で息を吹き込み制作された「青色鶴首徳利」(作品13)は、奇跡的に生まれた美しい形の宙吹き徳利で、玉石混淆の中から一瞬にして選び抜く様は、まるでハンターのようでした。また、盃と盃台、ちろりと酒杯の組み合わせなど、色と形、雰囲気をそれぞれぴったりと合わせるのに40年以上もの歳月をかけた作品もあります。元あった姿、もしくはそれ以上へと昇華させることが蒐集する喜びで、彼の哲学でもありました。 展示室
   この度MIHO MUSEUMさんと素敵な御縁がありました。美術館開設以来、初の館外での大規模な企画展となります。世界中の方々に、日本の伝統文化の奥深さ・美しさについて、ガラスを通して伝えていくことが瓶泥舎の大切な使命です。この素晴らしい環境、夢のある館内でコレクションを公開できることは、大変名誉なことであり、これまで以上に多くの方にご覧になっていただける機会であるととらえています。美しい桜の季節に、足を運んでくださったお客様の心に残り、幸せな気持ちになっていただきたい。そう願っています。 展示室
   開催にあたり、快く監修をお引き受けくださいました岡泰正先生、松山まで何度も機材を運び研究をしてくださった中井泉先生、そして大藤の思いを受け止め、この展覧会を実現させてくださいましたMIHO MUSEUMと岡山市立オリエント美術館の皆様、その他ご協力いただきました関係者の皆様に心から感謝申し上げます。ありがとうございました。
   最後に、この展覧会の準備期間中に夫は亡くなりましたが、今もずっと私のそばで見守ってくれています。愛する大藤さん本当にありがとう。

瓶泥舎びいどろ・ぎやまん・ガラス美術館
館長 大藤文江