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●北館● 1998年春季展作品紹介
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瑠璃色に煌めく至宝 ― 耀変天目
耀変天目(部分)
  科学が発達した現代でさえ、どうやっても再現できないもの、それが耀変天目茶碗です。艶のある黒釉に星紋が輝き、星の中には青貝のような紺碧の色彩が照り映える。じっと見入っているとそれはあたかも満天にきらめく星たちを眺めている、というよりも、宇宙空間の彼方に漂っていますかのような気がしてきます。光を投げかけるとそれに応えるかのように光輝を発しはじめる耀変は実に神秘的です。
  鎌倉時代、栄西禅師によって中国から宋の禅院の喫茶の習俗と茶の種が伝えられた日本において、次の室町時代は唐物至上主義の会所茶の全盛期でした。会所飾りで茶碗は建盞(けんさん)の天目が一番とされ、その中でも殊に天下一の名碗とされたのが耀変天目です。
  耀変天目は国宝の三碗が特に世界に誇れる絶品といえますが、第四の耀変として位置づけられるのがMIHO MUSEUM の耀変です。国宝の三碗の場合、結晶が数点集まった状態ですが、この耀変は斑紋がそれぞれ独立した状態で発色し耀変独特の輝きを持つ斑紋が見込みを中心にあらわれています。梅鉢様の大星紋こそありませんが、青貝のような紺碧色が光に応じて瑠璃色に変化する星紋が、光沢のある黒釉の上に輝いています。緩やかに轆轤挽きされ口縁部で一度絞り込んだ姿はきわめて端正で、覆輪のない口縁部がむしろ全体をキリッと引き締めています。加賀前田家に伝来した名宝であり、現在重要文化財に指定されています。
  宋もしくは元時代に造られた中国陶磁を代表すると言っても過言ではない、建盞の中でも特に優れた耀変が、日本にのみ伝世しているのは紛れもない事実です。また、耀変は焼く際の窯の中での火加減で偶然生じるもので、人間業では造ろうとしても造れないといわれています。
  耀変天目茶碗−それは神のなせる業によって生み出されたまさに神器というべき茶碗なのです。
耀変天目

耀変天目
中国・宋時代 11〜12世紀
高さ:6.5〜6.6cm 
口径:11.8〜12.1cm
高台径:3.9cm



雲錦蒔絵提重 山本春正作
雲錦蒔絵提重 山本春正作
江戸時代 18〜19世紀
持ち運びに便利な提重式の花見弁当箱。桜花と紅葉のいわゆる雲錦文様を蒔絵で施し、春秋の行楽どちらにも使えるしゃれたデザイン感覚をもっている。

十一面観音坐像・僧形坐像
十一面観音坐像・僧形坐像
平安時代 12世紀
小さな仏像の姿を借りて、野山に現れる神道の神を表したもの。単純そうな彫りのなかにも核心を捉える緻密さがあり、何か大きなものがしんと静まり返ったような印象を与える。

乾山銹絵染付春草図茶碗
乾山銹絵染付春草図茶碗
江戸時代 18世紀
雪深い山里にようやく訪れた早春の気配溢れる茶碗。わらび、ぜんまい、つくしなどの野草の愛らしさに、自然を見つめる乾山の温かい眼差しを感じる。

新古今和歌集断簡 伏見天皇筆
新古今和歌集断簡 伏見天皇筆
鎌倉時代  13〜14世紀
伏見天皇は和歌と書に長じ、その書風は伏見院流と呼ばれた。道風・佐理・行成の三蹟に学んだ流麗な筆跡は穏やかで潤いに充ち、美しい料紙が上代様を一層華やかなものにしている。

鳥獣人物戯画断簡(丁巻)

鳥獣人物戯画断簡(丁巻)
鎌倉時代 13世紀
滑稽な動物達の姿で親しまれている京都高山寺の鳥獣人物戯画のうちの丁巻。相撲をする二人の人物と騎馬人物を描く。つり上げられた力士の必死な様子がユーモラスに描かれる。
柳橋水車図屏風

柳橋水車図屏風
桃山〜江戸時代 17世紀
伝長谷川等伯筆
桃山というイメージそのままの絢爛な屏風。宇治の景物を詠んだ和歌を元として、一双画面を横切る大橋を中心に川辺のモティーフをあしらったデザインが斬新である。



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