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開館10周年記念特別展T
 中国・山東省の仏像
   飛鳥仏の面影
会期
2007年3月15日(木)〜6月10日(日)
 
主催:  MIHO MUSEUM /京都新聞社/山東省文化庁
共催: 山東省博物館/山東省石刻芸術博物館/青州市博物館/諸城市博物館/博興県博物館/安丘市博物館/濱州市文物管理所
後援: 中華人民共和国国家文物局/中華人民共和国駐日本国大使館/滋賀県/ 滋賀県教育委員会/NHK大津放送局/びわ湖放送株式会社
   インドに生まれた仏教は、シルクロードから長安、洛陽に伝わり、山東省には3 〜 4世紀頃に伝えられました。本展は山東省に仏教が伝来した五胡十六国時代から、北魏、東魏、北斉、隋にいたる、4世紀から7世紀初頭までの仏像72点を一堂に会し、その変遷を概観しようとするものです。

   このうち41点は金銅仏、31点が石仏です。32点には銘文があり、制作年代を考える基準 を与えてくれます。1996年に青州市龍興寺遺跡で発見され、世界を驚嘆させた仏像群から は16体の名品が出展され、2007年末に当館から山東省に寄贈される博興県出土の菩薩像と あわせて、宝冠に蝉の飾りのついた菩薩像が3点そろうのも見どころです。
釈迦三尊像(部分)

図1
宝冠に蝉の飾りをつけた菩薩像

   山東省で北魏末期から東魏時代にかけて造られた中国風の作風を示す菩薩像のなかに、頭上にいただく宝冠に蝉の飾りをつけたものがあります。(本誌表紙、図1、図3)

   この様な姿の菩薩像は本来仏教の規定にはなく、おそらく中国の戦国時代以来、皇帝の近臣や高級宦官が清廉、節倹の証として冠の正面に蝉の飾りを使用するようになった伝統に由来していると思われます。俗人が付けた蝉の冠飾りは現実に幾つも出土しており(図2)、ことに北燕時代(409−436)に生きた馮素弗の墓からは、蝉の冠飾りとともに、冠の正面に仏坐像が型押しで現わされ、これを隠すように表面に歩揺飾りを付けた冠が出土しています。もしも生前、彼がこの冠を付けたとしたらどうでしょう。馮素弗は冠の内に化仏をいただいた観音菩薩の姿となったのです。加えて、彼は蝉の冠飾りももっていたのです。

   このような崇仏の貴人が現実に存在している事実は、蝉の冠飾りを着けた貴人になぞらえて、このような菩薩像が誕生した可能性を思わせます。

   このたび展示される3体の像が造られた時期が、北魏末期から東魏の時代に限られていることも、今後、蝉の飾りをつけた菩薩像の謎の解明になにかの示唆を与えるかもしれません。
蝉文金飾

図2
菩薩立像

図3



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