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楽園へといざなう器 仔鹿形リュトン
酒神ディオニュソスの信仰は三千数百年前すでにエーゲ海のクレタ島にあったようです。何よりも酒は彼らの神々の賜物であり、酩酊によって産み出し育む自然の神と一体になろうとしたのでしょうか。

牡鹿形リュトン
仔鹿形リュトン 黒海沿岸地域
前4世紀 銀に鍍金

酒神ディオニュソスは豊穣の神、永遠の至福の地エリュシオンへと導く救済者だったのです。そして鹿は春の復活再生を意味し、酒神の秘儀で犠牲として捧げられたようです。脚をそろえて前に伸ばした左の鹿の表現は、ペルシア型のリュトンには見られないもので、狩られた獲物を象徴していたのかも知れません。
牡鹿形リュトン
小アジア/黒海沿岸地域 
前4−前2世紀 青銅 山猫形リュトン
ディオニュソスの秘儀
ディオニュソスの神聖な動物には ライオン、豹、牡牛、ロバ、鹿などのほか、大山猫も含まれました。特に猫科の猛獣の前半身をつけたリュトンは 、ディオニュソスの秘儀で使われる重要な器だったようです。猫科の猛獣 山猫の前半身をつけたリュトンが 、ギリシア文化の影響を受けた西アジアのパルティアの時代に作られました。
ケートス文皿
ケートス文皿 バクトリア 前2世紀 銀
山猫形リュトン
パルティア 前1世紀
銀に鍍金

楽園の東漸
アレクサンドロスの東征以降、中央アジアには多くのギリシア人が移住してギリシア文化が移植され、前3世紀にはギリシア人の王を頂くバクトリア王国が独立しました。やがてギリシア人のエリュシオンの楽園イメージも定着し、後に中央アジア仏教の極楽イメージにもつながっていきました。ギリシアの海の怪物ケートスは初期仏教で極楽へいざなうものとして採り入れられました。

楽園へといざなう美しき器たち ─ リュトン
その物語にひととき耳をかたむけて頂けましたら幸いです。

主催: MIHO MUSEUM 京都新聞社 後援:滋賀県 滋賀県教育委員会 NHK大津放送局 BBCびわ湖放送

学術講演会「新たなる古代文明の発見 トルクメニスタン ゴヌール・テペからの報告」
7月19日(土)14:00〜16:00 南館レクチャーホール 講師:堀 晄 氏(古代オリエント博物館)



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