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2009年 春季特別展
ユーラシアの風 新羅へ
2009年3月14日(土)〜6月7日(日)
Eurasian Winds toward Silla

草原の道

 ユーラシアは、全陸地面積の三割近くを占めて広く東西にまたがる、地球最大の大陸。そこに展開する様々な民族・文明は古来、覇権と繁栄を争い、また互恵の関係を温めてきました。特に交易の営みはこの遥かなる東西をつなぐものでした。後世“シルクロード交易”と呼ばれるようになった営みは、東アジアの絹、中央アジアの馬、北アジアの黄金や毛皮、そして地中海域や中央アジアのガラスなど、当時の希少な品々の行き交う道程を作り上げて行ったのです。
 こうした交易路として最も古くからあったのは、北アジアの草原地帯を中心として、西は黒海沿岸から地中海域、東は中国の華北・東北地域を結ぶ“ステップ(草原)ルート”でした。

宝剣
金製冠飾
金製冠飾 慶州 金冠塚出土 五世紀

草原の遊牧民の冠を受容した新羅では、このような独自の美しい冠装飾を発達させました。


北アジアの草原地帯は、古くから騎馬遊牧民が活動し物資の交換や情報伝達を行っていたのです。東アジアの絹は中国ばかりではありませんでした。高句麗の新石器時代の遺跡からは、蚕の姿や桑の葉を描いた土器や、石で作った蚕の小彫刻も見つかっています。『三国志魏書』弁辰伝には、後の伽耶と新羅に相当する弁韓と辰韓で“桑の木と蚕が多い”との記事が見え、韓半島の絹も古くから生産され他国にも知られていたことをうかがわせます。
 おそらく彼らには中国を経由せずに、ステップルートの騎馬遊牧民を通じ西域への窓が開かれていたのでしょう。韓半島の墳陵や遺跡からは同時代の中国には見られない煌びやかな遺物が発見されています。


金銅冠 伝慶北 六世紀

山字を重ねた樹木形とジグザグの鹿角形の立飾をつけた冠は新羅で発達したものですが、この意匠の組み合せははるか西方の遊牧民サルマタイの樹木と鹿の飾りの付けられた黄金冠を連想させます。
金銅冠
宝剣 慶州 鶏林路出土 六世紀

新羅の小さな古墳からもこのような豪華な副葬品が見つかっています。発掘例や壁画の記録から、西トルキスタンや中央アジアからもたらされたものと思われます。



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