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桃源郷 MIHO MUSEUM 物語
建築家 I. M. ペイのこだわり  その1


桃の花咲き乱れる林を行き、洞窟を抜けるとそこは桃源郷―もしもあなたが桃源郷を創るなら、いったい何にこだわりますか?


I.M.ペイの場合、例えば洞窟出口です。MIHO MUSEUM に向かうトンネル、普通は土留めのコンクリート枠で四角に囲みますが、来日して開口一番
「あれを取る事はできますか?」
「うーん。」
と唸る建設関係者。そして工事は開館間際、今や昼夜を分かたぬ建築工程の中、美術館出口のコンクリートをはがし、植樹の方向へと向かったのです。山の中腹にぽっかり空いた洞穴。

   
さて、開館当初はコンクリートの形が残って、ほよほよと生えていた緑がようやく周囲の山に追いついた頃、再びやって来たペイは言いました。
「トンネル入り口のコンクリートを隠すために、大きな木を植えましょう。」
のみならず、
「橋の塗装の質感はいいですね。これをトンネルの向こうまで伸ばしましょうか。」
  この舗装、小さな陶器の粒でできており、橋に使えば雨水を通して、下の谷筋の植物も生き返るという代物。
MIHO MUSEUM の閉館期に伸ばした、枝垂れ桜の道路がこれです。つるりとした質感に、トンネル入り口を隠す大きな樫の木、果たしてペイさんこれで満足したことやら。

 




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