庭園図(フレスコ)





 ローマ共和制期後半からローマ帝政期前半の壁画のなかで,われわれの目を楽しませてくれる最高のものはいわゆる庭園画である。これはいわゆる第三,四様式の壁画で,前1世紀未から後1世紀末にかけて最盛期を迎えた。この3点の壁画は,同じような枠取りがなされているので,同一の壁とは言わないまでも少なくとも同一の部屋の壁を飾っていたもので,ヴェスヴィオ山の周辺のカンパニア地方の代表的な工房で制作されたと思われる。各壁画は赤褐色, 白色,黄金色の装飾帯で縁どりされ,風景は遠近法を用いて描かれているので,これらは「窓から見た花が咲き乱れる庭」を表していると言えよう。この種の壁画は,野外庭園の列柱式建物の背面の壁に描かれることが多かったが,本物そっくりに描かれているので,その田園風景が家の向こうにまで延々と続いているような錯覚を与えるのである。

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