![]() |
|
この展覧会は、美しい経典や仏の姿に隠されたものがたりを、皆様とご一緒にひもといていこうとするものです。神々しい誕生仏、考え深げな維摩居士、艶(あで)やかに微笑む観音様、どれもかけがえのない人々の思いを、長い間受け止めて来ました。 中でももっとも美しい、如意輪観音像を見てみましょう。 天上界を救うとされる如意輪観音様、ゆったりと微笑むその姿。あこがれの観音様は、赤や白や緑や薄桃色でふんわりと描かれています。まあるいお顔、やわらかな腕、引き締まった腰、なよやかな肢体は麗人の条件です。とりわけそのまなざしは、胸の中に温かい光がさしてくるように、静かに人の心に沁み込んで来ます。 この観音像は、滋賀のお寺から現れました。 お寺は数年前に建て替えの時期を迎えました。檀家さんがいらないものを片付けながら、焚き火を燃やしています。本堂の奥から箱が運び出されました。 新聞紙にくるまれて、何かが入っています。 「おや、なんだろう?」 くるくると開いてみると、何と見たこともない、美しい観音様が出て来ました。 「これは、たいへんなものだ。」 ご住職と一緒に教育委員会へ持って行くと、即、県の文化財に、そして文化財修理所を経てきれいになった観音様は、あっという間に国の重要文化財となりました。 それにしても、どうしてこの時期にお出ましなのでしょう。もしかしたら今、誰かにお会いしたかったのかもしれません。 ![]() |
|
![]() |
|
如意輪観音像 鎌倉時代 13世紀 法蔵寺(野洲市)蔵 (展示期間:7月11日〜8月2日) |