常滑窯のある知多半島と湾をはさんで対岸に位置する渥美半島で開窯したのが、渥美窯です。ここでも壺・甕・鉢の3器種を主力製品として焼成しました。他の諸窯と同様、時代の農業を支えたやきものとして位置づけられますが、その一方で、鎌倉時代に再建された奈良・東大寺の屋根瓦を焼いたり、経塚に埋める経筒外容器として使われたりすることも多く、宗教上の用途にも使われました。常滑と違い、渥美のやきものには器表に線彫りの文様が施される壺がみられます。有名な秋草文の壺をはじめ袈裟襷(けさだすき)文や蓮弁文、蘆鷺(あしさぎ)文など、絵画的ともいえる装飾には渥美の陶工たちの美意識が垣間見られ、豊かな創造性が感じられます。
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