大英博物館の名宝10点が来日
内8点は日本初公開
サルゴンU世の壺
サルゴンU世の壺
新アッシリア(イラク)
前720−前710年
大英博物館蔵
© The Trustees of the British Museum
  ガラスと言えば透明なコップや窓ガラスをイメージしがちだが、そのような無色透明に近いガラス製品が作られたのは、ガラスの発明から1500年以上も経ってからである。年代のわかる最古の作品がこの壺で、型にガラスの粉を詰めて鋳造し石のような塊を作った後、中部を工具で刳り抜いて作られた。見つかったのはメソポタミアのティグリス河畔、当時オリエント世界に覇を唱えたアッシリア帝国の首都ニムルドにある北西宮殿で、多くのアラバスター製の小壺と共に発見された。壺の肩には、「サルゴンの宮殿、アッシリアの王」という楔形文字とライオンの姿が彫り込まれており、サルゴン二世(在位 前722−前705)の時代に制作されたことがわかる。年代のわかる世界最古の透明ガラスとして著名な作品である。
獅子頭形杯
獅子頭形杯
アケメネス朝ペルシア 前5−前4世紀
MIHO MUSEUM蔵
  古代ギリシアの喜劇作家アリストファネスの作品に、ギリシア人の使者が、当時の超大国ペルシアの宮廷を訪問し、大いに歓待を受けた場面が描かれている。ペルシア人はストレートの甘いワインを、金や透明ガラスの器に注いでもてなしたという。まさにこの作品が、その器であったかもしれない。獅子の彫刻、全体が角形で同心円状のカットを持つことなど、当時のペルシア風デザインが遺憾なく反映されている。
  鋳造によって作られ、アンチモンという物質を入れて天然ガラスの色を消したことが分かっている。ガラスの透明度や丹念なカットを見れば、極めて高度な知識と技術を駆使して作られたことがわかる。ガラスの角杯でこれほど完璧に残された作品は他に類例がなく、珠玉の名品と言えよう。
ゴールドアカンサス文碗
ゴールドアカンサス文碗
東地中海(イタリア・カノッサ墓9出土) 前250年頃
大英博物館蔵 © The Trustees of the British Museum
  南イタリアのカノッサ墓から発見されたヘレニズム時代の数々のガラス製副葬品は、世界を驚かせた。ほとんど類例のない大形モザイクガラスの皿や豪華なカットガラスに並んで、この作品が発見された。
  ゴールドサンドイッチという技法で作られたこの碗は、金箔を切り抜いて、極めて精緻なアカンサス文と波文を表現し、それがガラス碗全体に広がっている。金箔は二つの透明ガラスの碗の間にぴったりと挟まれ、覗きこめば目も綾な景色である。ゴールドサンドイッチ技法の作品の中でトップクラスに位置し、大英博物館が誇る名宝の一つである。
  日本に伝わる截金(きりかね)技術を駆使して復元された作品と記録も合わせて展示される。



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