富士三保図屏風 曾我蕭白筆
江戸時代 十八世紀 富士三保図屏風 曾我蕭白筆
江戸時代 十八世紀
富士三保図屏風 曾我蕭白筆 江戸時代 十八世紀
信楽大甕
室町時代 十五世紀 白洲正子旧蔵

かくれ里に帰る

 白洲正子が近江を「かくれ里」と評したのは、聖武帝とともに東大寺を開いた良弁等帰化人と日本人が手を取り合って、独自の文化を形成してきた、日本の歴史の楽屋裏のようなところだったからであろう。時を経て、MIHO MUSEUM創立者・小山美秀子は近江の山中に桃源郷を見出した。誰も見ないものを観ることが出来る人たちというは、子どものように曇りのない心と澄んだ眼を持っているのである。信楽そのもののような景色をたたえた大甕の里帰りを、二人は喜んでくれていると信じている。
信楽大甕
室町時代 十五世紀 白洲正子旧蔵
金銅光背
鎌倉時代 十二─十三世紀

くりりりりっ、こりっ

 この光背の外周を見よ。勢いよく伸びる三葉の芽の間に、ぐいんぐいんと巻く蔓(つる)。くりりりっと彫られるその蔓の絶妙な角度。おしまいのポチの中まで、こりっと仕上げるこの執念。時は平安末か鎌倉か、銅板に踊る彫金職人の手は自在に動き、心中には天上のリズムが小気味よく鳴り響く・・
  今春は新収蔵品・曾我蕭白「富士三保図屏風」を筆頭に14点が初お目見えし、「神と仏・焼きものの国・富士巡礼・春の宴・茶の愉」の5章立てからなる所蔵品による日本美術を展覧いたします。
  作品の鑑賞の仕方として、美術史的な発見や技術の発明をひもとく楽しさがありますが、この春は、それに加えて一つ一つの美術品がもつ個性に感じ入り、ご堪能いただくことを主旨としています。その入口へとご案内をさせていただくのは、当館学芸員のつぶやきです。
  新たな視点でみると新たな発見があり、新たな楽しさがわいてきます。クスッと笑ったり、ナルホドっと感心したり、当館学芸員独自の視点とともに多様な日本の美術をどうぞお楽しみください。
展覧会公式書籍
『曾我蕭白《富士三保図屏風》と日本美術の愉悦』
                青幻舎より刊行!



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