Shangri-La vol.38 - MIHO MUSEUM

に優れた硝子は数あれど、江戸時代のびいどろほど儚く、柔らかく、花のように可憐で、何とも言いようのない色気を帯びたものがあるでしょうか。
　熱い炎に溶けたガラスを扱う職人の一瞬の手技が、ほんのちょっとした違いを生み出します。瓶に吹き込む息の膨らみの違い、ブルーやグリーンや紫の微妙な色の階調、マーブルガラスの色バランスの妙、たゆたう肌の質感、やすりで一本一本削り出した切子は、ウィールの線とは一味違う、柔らかなカットを和ガラスに与えます。
　ここに生涯を賭けて、和ガラスの美しさを追い求めた人物がいました。大藤範里氏─



		に優れた硝子は数あれど、江戸時代のびいどろほど儚く、柔らかく、花のように可憐で、何とも言いようのない色気を帯びたものがあるでしょうか。　熱い炎に溶けたガラスを扱う職人の一瞬の手技が、ほんのちょっとした違いを生み出します。瓶に吹き込む息の膨らみの違い、ブルーやグリーンや紫の微妙な色の階調、マーブルガラスの色バランスの妙、たゆたう肌の質感、やすりで一本一本削り出した切子は、ウィールの線とは一味違う、柔らかなカットを和ガラスに与えます。　ここに生涯を賭けて、和ガラスの美しさを追い求めた人物がいました。大藤範里氏─	松山市・道後温泉に開館する瓶泥舎びいどろ・ぎやまん・ガラス美術館の館長で「その分野で最も美しいガラスを探す。」ことを蒐集の目標としておられました。　幸いなことに、氏のご希望もあり、瓶泥舎コレクションを代表する逸品をお借りして、氏の長年の蒐集を一堂に展観することとなりました。　野にある花のように咲き誇る江戸時代のガラス、それを作り続けた和の職人の心と技、そして職人を指導し自ら楽しんで使ったであろう当時の数寄者たちの優れた眼を、どうぞ存分にお楽しみ下さい。