さらに独創的な表現方法を進展させました。そして60歳代には会津、三春（現在の福島県三春町）を行き来し、「自画像」（３）などの傑作を生み出し、画人としての絶頂期を迎えます。琴高仙人が鯉にまたがって登場するシーンを描いた「琴高・群仙図」（４）や呂洞賓が龍の化身との激しい禅問答を繰り広げる「呂洞賓図」（５）などの雪村ならではの傑作がこれらの時代に生み出されました。
 　さらに晩年に至っても雪村の意欲は少しも衰えず、三春の「雪村庵」を拠点に、常陸を往来し創作活動を続けています。86歳の時に描かれたという「瀟湘八景図屏風」（６）をみると、後世「絵は仙術だ」と弟子に教えたとも伝えられる雪村の画境がしのばれます。

 　今回の展示では雪村の後継者たちをはじめ、雪村芸術に刺激を受けた尾形光琳、酒井抱一、狩野芳崖や橋本雅邦ら、江戸、明治時代の作品も展示し、雪村の造りだした奇想の影響の大きさを顧みてみたいと思います。