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に蒙った彩色のかすれや壁の汚れなどの経年による変化を6000色の糸を使って再現しています。それはあたかも蓮華弥勒と名付けられたこの綴れ織の菩薩が、衆生救済のために費やしたという長い長い思惟の時間を連想させます。
この展覧会はこの二つの綴れ織が、初めて同時に公開されることに因んで企画されたものですが決して綴れ織という染織品を主題にした展覧会ではありません。前半部は悲母観音図にも描かれた楊柳観音と、芳崖による悲母観音図製作の推移を展望する二つの節で構成され、古くから普及していた柳の小枝と聖なる水にかかわる信仰を背景に仏教の一菩薩として登場した楊柳と水瓶をもつ菩薩像が、狩野芳崖によって人類生誕の主となるまでをたどります。また、後半部ではインド、中国、朝鮮半島を経由してわが国に伝えられた半跏思惟という形式の菩薩像が、インドで悟りを開く前の釈迦として生み出され、後に観音として、または弥勒として受け入れられながら、広く人々の心をとらえ、この形式に込められてきた心を振り返りながら、法隆寺金堂壁画二号壁を介して綴れ織として現代に甦った蓮華弥勒像の心に迫ります。 |