2014年夏季特別展
ふた つづれおり
二つの綴織
  ひぼかんのん れんげみろく
MIHO悲母観音と蓮華弥勒

会期 2014年7月19日(土)〜8月17日(日)
主催:MIHO MUSEUM 京都新聞
協力:法隆寺/川島織物セルコン
後援:滋賀県/滋賀県教育委員会/NHK大津放送局
   /BBCびわ湖放送/エフエム京都
  MIHO MUSEUM は、現代に制作された綴織(つづれおり)の傑作二点を所蔵しています。本展はこの二つの綴織が、初めて同時に公開されることに因んで企画されました。
  「MIHO悲母観音像」(平成6年・1994)は、明治期日本画壇の巨匠、狩野芳崖(かのうほうがい)の絶筆「悲母観音図」を基に、「蓮華弥勒像」(平成24年・2012)は、昭和24年に焼失した法隆寺金堂壁画のうち第2号壁の「半跏思惟(はんかしい)像」を基に、株式会社川島織物セルコンが織りあげた綴織作品です。展覧会では、現代の織(おり)工芸技術の頂点といえる二つの綴織とともに、楊柳(ようりゅう)観音や半跏思惟像など、国内外の仏教美術の名品を展観しながら、二つの図像誕生の背景をたどり、さらに、二つの綴織制作の秘密が、門外不出の織下絵(おりしたえ)(川島織物セルコン織物文化館)などの資料を交えて明かされます。
  また、愛知県立芸術大学によって、日本画家片岡球子を中心に14年の歳月をかけて、昭和62年(1987)に完成した法隆寺金堂壁画の模写12点(愛知県立芸術大学 法隆寺壁画館)を一堂に展示します。
MIHO悲母観音」のコーナーでは、この綴織の原図となった狩野芳崖の「悲母観音」に焦点を当てます。この名画の構想はどのように生まれたのか、芳崖のどのような思いがこの作品に込められていたのでしょうか。
観音図下図【重要文化財】
  かんのんずしたず
1 観音図下図 【重要文化財】
紙本墨画淡彩 169.2×84.2cm
東京芸術大学所蔵
  この図が製作された契機は初孫の存在にあるとされていますが、芳崖が目にした現実では孫の後にはおそらく母親が立っており、子は指さすなにかを発見し、それを母に教えようとしていたのではないでしょうか。この母親の代わりに芳崖が採用したのが楊柳観音でした。このとき初孫とともに描かれる観音に楊柳観音を選んだ芳崖の選択には、この観音が本来的に持っていた楊柳と水で諸病を癒し、生命をはぐくむ力への期待と初孫の健やかな成長を願う思いもあったかに想像されます。いわばこの図は観音に仮託された母子図ともいうべきものであったと思われます。



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