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![]() 映画監督の黒澤明氏は、「根来」を愛蔵した蒐集家として知られています。作品「蜘蛛巣城」では、宴席の場面で使用する器物を室町時代の作を模して本格的に製作し、また、クライマックスでは自身が所蔵する瓶子を象徴的に使用しています。
「根来」とは中世の神社仏閣で使用されてきた朱漆塗の什器類を総称する呼び名です。それらの器物には、年月相応の割れやキズ、傷みも当然あり、永年の使用により朱漆はすり減り、下地の黒色が浮かび上がっています。しかし、それらが器物の美しさを一層きわ立たせていると言ったら信じられるでしょうか。 本展では、「根来」研究の第一人者、河田貞氏の監修により、その「根来」の優品400点以上を網羅して、その魅力を紹介いたします。美しさと実用性をかね備えた「根来」の造形と共に、朱と黒の味わいをご鑑賞下さい。 |
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鎌倉時代、中国から禅宗と共に様々な器物がもたらされました。それらの中に含まれていた、輪花形の陶磁器や漆器を写したものが輪花形式の朱漆器と考えられています。唐物尊重の時代にありながら、日本の工人の造形感覚は、様々な輪花のバリエーションを産みだしました。しかし、私たちが「根来」といって鑑賞する朱と黒のすれ味を彼らは予期していたのでしょうか。
映画監督黒澤明氏が愛したこの輪花盆。中央に残った朱は、偶然なのか意図的なのか。「根来」の中でも他に例を見ない天賦のすれ味を、黒澤明氏はどのように見ていたのでしょう。
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