湯桶は、元来金属製の点茶用具であったことが知られていますが、本品のような「根来」の遺品も多く見られます。
上面に窪みを作ることであふれた湯が側面に流れることを防ぎ、また、底部の腐食防止に足をつけるなど、実用性に考慮しながら、八角形を基本とし、すべての面を曲面で仕上げており、当時の工人の優れた造形感覚と技術を見ることができます。また、朱と黒の塗分けや胴体部に木目を生かすという美意識には、縄文時代から木と向き合ってきた日本人の感性が感じられます。加えて、永年の使用により八角の稜線が黒く浮き出て輪郭を引き締める効果は、「根来」ならではの魅力といえるでしょう。
この湯桶のように、形の美しさが機能や用途の上に、洗練され発展している点と、木の美しさを最大限に引き出す漆塗、経年によるすれ味が「根来」の魅力といえるでしょう。
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